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5万年前

五万年前に人類の壮大な旅がはじまりました。この本は最新のヒトゲノムが導き出した人類の旅と進化の物語を著したものです。ニコラス・ウェイド著「5万年前」。私達の先祖は五万年前にアフリカを旅立ったわずか150人前後の人達のようでなのです。日本人、イギリス人、ドイツ人、インド人、イラク人、すべての人達は(アフリカは除く)この150人を共通の先祖としているというのです。この時期にアフリカに住む人類の先祖の人口は五千人ほどに激減し厳しい生存状況にあったようです。我々の先祖である150人はこの状況打開のために何世代もかけてアフリカからインドまでその生存権を広めて行ったようです。当時はアフリカの外の世界には人類の遠い親戚である、ネアンデルタール人がすでに先達として居住していました。人類の先祖達より体格は一回り大きく、脳の大きさでもさほど変わらない彼らと熾烈な生存競争を重ね、自然淘汰を受けながら生き抜いた先祖達。その先祖達の戦いの歴史が我々のDNAの中に今でも情報として残っている。この本はそうした人類の足跡を最新の遺伝子情報と考古学などをもとに紐解いていく本です。翻訳も読みやすく、とても興味深い内容にグイグイ惹き込まれ時間を忘れて読むことができます。定住と幼化進化、現在の狩猟民族と先祖達の狩猟生活との関連性、そして果てしない部族間闘争、など興味の尽きない話がたくさんあります。
人類は現在も進化を止めてはいません。私達の遠い子孫達はどんな道を歩んでいるのでしょうか。遠い過去と未来に思いをはせることの出来る本だと思います。

日本二千六百年史

大川周明著「日本二千六百年史」を紹介します。大川周明著作は以前にも一冊紹介しました。彼は戦前の革新派右翼として有名ですが、その博学ぶりは当時も今も高く評価されているようです。
この本はそんな大川が日本の歴史を形成する上で重要だと思う点を通史的叙述で重点的に著しています。同時に当時の右翼の人達がどのような歴史観を知るうえで読んでみる価値を持っている本ではないでしょうか。
また、この本が出版されたときに検閲で削除された部分も傍線付で載せられています。今ではそれほど過激とも不敬とも思えない内容でも当時は削除されていた点は読んでいて考えさせられるものがあります。また大川が一部過激狂信的右翼から攻撃されていた理由もわかる気がします。当時の時代、思想背景を考えれば大川が単純過激な右翼ではなく実に理性的かつ深く日本史を観察していたことに驚きを感じます。またその歴史観は今日の保守的立場に立つ人達に大きな影響を与えていることは、一目瞭然です。現代では忘れられた、あるいは恣意的にその存在を消された感じのある戦前の右翼思想家や文化人の考えをもう一度しっかりと考え、差別や偏見なく研究し一般的にも議論してもいいときに来ているのではないか。でなければ日本人の価値観は偏った薄っぺらいつまらないものになってしまわないか。最近はそんなことが心配です。

私と20世紀のクロニクル

あけましておめでうございます。今日はドナルド・キーン著「私と20世紀のクロニクル」を紹介します。著者は日本文学者で有名なアメリカ人です。この本は著者の自伝的な内容になっています。キーンさんの幼少時代の重要な出来事を簡素にまとめ、少年期から青年期にかけて、いかに東洋の文化に惹かれて行ったか、またその興味が日本に収斂されて行ったかが述べられています。そして太平洋戦争へと時代は進み、キーンさんは海軍の情報局で日本語の通訳として戦争にかかわっていきます。戦死した日本兵の手帳に書かれた手記に感動しそれを、いつか遺族に届けようと隠し持つも上官に発見され大目玉をくらう話や、捕虜との話など興味深いものです。
戦後はどうにか日本に行こうと色々と工夫した話。大学での日本文学と向き合う話。日本で日本を代表する文学者達との友情。などなど、面白いエピソードが続きます。
どのエピソードからも著者の日本への深い愛情と揺るぎない信頼感が感じられます。このような理解者を日本が持てたことを喜びたい気持ちになりました。また、このように外国の人を惹きつけてやまない文化を育んだ先人に感謝したい気持ちもわいてきました。また少しずつそれら文化が溶解している現代に対する不安感も感じます。キーンさん自身も京都に行くたびに古い京都が失われていくことに寂しさを感じているようです。ある程度は時代によって淘汰されるのは仕方ないことかもしれませんが、どこかでこの溶解を踏ん張ってとめなければ次世代の人達は空虚な日本しか引き継げなくなってしまうのではないでしょうか。
「開かれた政府」???これがですか
鳩山首相は「開かれた政府」をスローガンのひとつに掲げていますが、どうも眉唾もののようです。なんと、温室効果ガスの25%削減の家計への影響を検討したタスクフォースの試算を「非公表」扱いとしました。自分に都合の悪い情報は隠し国民にきちんと説明しない。さらには報告書の一部が気に入らないらしく自分達の都合のいいメンバーに入れ替えて試算をしなおすそうです。これでは中国共産党などとなにが違うのでしょうか。民主党政権は一部の識者の間では「全体主義の臭いがする」などと言われてきましたが、ついに馬脚を現したようです。
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日本を探す

日本を探すとは日本を考えることでしょう。この本は産経新聞の特集記事を一冊の本にまとめたものです。年々消えつつある日本の伝統や文化などを記者たちが全国で再発見していくといったスタンスで構成されています。新聞の記事だけに文章も短く簡素で読みやすく普段は読書の習慣がない人でも読みやすい本だと思います。
この本で驚いたのは、たたらの伝統が一度途絶えかけていたということです。たたらは砂鉄を精製する方法で宮崎駿監督の「もののけ姫」で登場したので記憶の方も多いと思いますが、日本刀を造るにはたたらの低温で精製された玉鋼でないとだめなのです。西洋式のコークスで出来る鋼では日本刀は造れない。もう少しで我々日本人は民族の中に深く刻み込まれた精神的象徴ともいえる刀すら造ることが出来なくなってしまうところだったのです。
ほかにも、世界で一番古い企業(1400年前から存在)、金剛組(大工)の取材。伊勢神宮の取材。サザエさんと父権の話。山本夏彦さんの話など興味が尽きない話が続きます。
新しい価値観、経済的効率はもちろんとても大切なものですが、同時に文化や伝統についてももう少し考えるべき事があるのではないでしょうか。
通商国家カルタゴ

「カルタゴ」この古代国家は通常はローマとの間で行われたポエニ戦争で有名ですが、常にローマの視点で描かれるこが多いのではないでしか?カルタゴはローマによって滅ぼされ、カルタゴ人も多くが殺され生き残りは奴隷として売られてしまったゆえに彼ら自身の言葉によるカルタゴの文献がほとんど残っていないのと、ローマの文化を受け継いだヨーロッパがその後の世界史の中心となっていった歴史もカルタゴが世界史の中で忘れられていった理由でしょう。この本は、そんなカルタゴの歴史を殖民都市カルタゴ以前にさかのぼり、フェニキア人の発展と彼らの地中海貿易の優位がいかに確立していっかが描かれています。また謎にみちた彼らの宗教観や文化なども興味が尽きません。
海洋帝国カルタゴの歴史は貿易の利益と制海権をめぐるギリシャ、ローマとの闘争の歴史でもあります。彼らの繁栄と衰退は、望むと望まざるとにかかわらず海洋国家として生きるしかない日本にも示唆に富むものがあるとも思います。忘れられた古の帝国に思いをはせながら秋の夜長を楽しんでみてはいかがでしょう。










